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思い込みのバリアフリー
バリアフリーなホームページ
■思い込みによるバリアフリー
ホームページのバリアフリー化において問題となるのが、健常者の思い込みです。
ユニバーサルデザイン=バリアフリーと考え、障害者(特に視覚障害者)に配慮したページをつらなければという思いで作られているサイトが目立ちます。
バリアフリーに配慮しようとする姿勢はよいのですが、分からないまま、とにかくバリアフリー対策を施したという実績作りに見えるサイトが多いのは、本当に残念です。
これらは基本的に実際の障害者の声を反映して作られているのではなく、健常者による勝手な思い込みで作られる事が多いからでしょう。
健常者にとって上記は一見ごくまともな意見のように感じられるのではないでしょうか。これらは大間違いとまでは言えないとしても、全く当を得ていない配慮です。
視覚障害者はどのようにしてホームページを見ているか
■読み上げ機能付ホームページはバリアフリーの敵
少しシミュレーションをしてみましょう。あなたは視覚に障害があり全く見ることが出来ません。訓練してパソコンを使えるようになりました。
パソコンは健常者にはない機能が入っています。画面上のマウスポインタの位置を教え文字を読み上げてくれるスクリーンリーダーという機能です。
これがないと、ホームページを見ようとしてもどのソフトを起動して良いか分からないですからです。
障害者の高速道路利用に関する割引方法が変わったということを聞いたあなたは、その内容を知ろうとインターネットも出来る視覚障害者用のソフトを立ち上げました。(もちろんこのソフトはInternet Explorerではありません。)
時々見ているホームページなので、URLは覚えています。
トップページが開きました。いつものように読み上げが始まりました。すると、お知らせとしてバリアフリー対策としてユニバーサルデザイン化したとあります。障害者対策で貴方が見ようとしているページが取り上げられたようです。さすがは公的機関だと思いながら、そのページへ行こうと思います。
???
なんと言うことでしょうか、ページへのリンクはとても長ったらしく、しかも意味のない文字の羅列です。途中に?とかもあります。最近はやりのポータル化とやらで、動的にサイトを構築しているのだそうです。管理しやすいのかもしれませんが、貴方の使っているブラウザは、リンクボタンをクリックすることは出来ません。
ボタンを見ることは出来ませんから耳で聞いたものを覚え、キーボードで打つ方しかなのです。
有料ソフトには、ボタンクリックが出来るものもありますが、あなたは、ホームページを見るだけではなく手紙を書いたりすることもこのソフトでしています。いくつものソフトを入れると覚えるのが大変ですから、ずっと以前から同じソフトを利用しており、ホームページを見るだけに他のソフトを使いたくはありません。
やれやれやっと目的のページへ来ることが出来ました。
???
このページはバリアフリーにするために○○○が入り用です、○○○をダウンロードして下さいとあります。ダウンロードはとても不安です。どこへ何が入ってくるか分かりません。まあ、公的サイトですからウイルスなんて事はないと思いますが、ダウンロードすること自体とても難しいのです。でも、それでバリアフリーとなり貴方にとって重要な情報が得られやすくなるならばとダウンロードしようと考えました。
???
なんと言うことでしょう。これは、Windowsの○○でしかもInternet Explorerの新しいバージョンでなければ使用できないとあります。貴方の使っているWindowsは△△で、○○ではありません。もちろんInternet Explorerは、使っていません。買った時Internet Explorerは、入っていたのですが、使えないのと画面に余計なものがあると音声ガイドがわかりにくく除けてもらっています
仕方がないので近所のお友達の所へ行くことにしました。この友達は、少しは見えるため、画面が大きく見える専用のモニタを使っています。確かパソコンもWindowsの○○でInternet Explorerも新しいバージョンを使っていたはずです。
訳を話すと友達もさすがは○○役所だと、早速ダウンロードしました。1回ダウンロードすれば次からはしなくとも良いとのことです。これは期待できそうです。早速使ってみます。友達もスクリーンリーダーは入れていますから、ブラウザの操作はこの音声ガイドに頼っています。ホームページの中だけ音声化しても、ブラウザの操作まではしてもらえませんから。
???
お友達が声を上げました。文字が大きすぎて読めないとのことです。一般のサイトの文字は小さいので、その文字がちゃんと読めるように調整してある友達の画面では、わざわざ大きい文字で表示されているページは大きくなりすぎて文字を読む事が難しくなるのです。
???
ページの読み上げ機能とスクリーンリーダーの音声が重なって聞き取ることが出来ません。と、友達が悲鳴を上げました。パソコンがフリーズしてしまったとのこと、スクリーンリーダーと相性が悪かったのでしょうか。貴方が頼んでしてもらったことが原因のようです。申し訳なく謝りますが、どうすることも出来ません。友達も一生懸命に直そうとしているようですが、少しは見えるとはいえ、大変そうです。‥‥
バリアフリーなホームページは、特殊な機能を入れることでは実現しません
■重要なのは、汎用性。正確なホームページこそバリアフリー
上記は架空ですが、全くの想像ではありません。かなり近いことを実際に経験しています。(視覚障害者用のソフトを使用してテストしています)
ではどうすればよいのでしょうか、答えは簡単です。環境に関係なくどのパソコンやブラウザでもちゃんと表示できるサイト作りをするだけでよいのです。
そのための指標となるチェックも受けられます。「W3C Markup Validation Service」ですね。その上で、読み上げ順などへの配慮をするだけで、ほとんど問題ありません。なぜなら、視覚障害者は「自分が利用できる環境」で、ホームページを利用しているのですから。特別な配慮をしなければ利用できないものは基本的にバリアフリーであり得ません。文字を大きくしたり、背景色をJavaスクリプトで変えられるといった配慮も基本的に不要です。 背景色を変えなければ見られないような配色がそもそもバリアフリーではありません。文字も普通の大きさで充分です。大きな文字や黒バックに白の文字といったコントラストの強すぎる配色にするのは、余計なお世話と言われかねません。Cookieを利用出来るようにしろとか、かならずスクリプトを使えるようにしろとか書いてあるのも恐ろしいものです。高齢者や初心者、視覚障害者にこういったことを理解し、対処できる方がどれほどいるのでしょうか。健常者で、しかもパソコンに強い方でなければ見るなと言っているように思えます。これはバリアフリーとは、相容れないものだと思われます。
ようは、正確で、健常者が見ても分かりやすく、だれもが使いやすいホームページこそがバリアフリーなホームぺーなのです。
ホームページ制作会社なら当然このようなことは理解しているべきと思われるのですが、現実にはそうでもないようです・・・。
ホームページ読み上げシステム
■バリアフリー対策という障害物
最近、厚生労働省や岐阜県などバリアフリー対策を唱えている機関や県で、上記のような勘違いなバリアフリー対策が取り入れられています。しかも多くの自治体や企業なども追随しております。
当初のように、視覚障害者対策とは言わず、高齢者や初心者対策というようにニュアンスを変えたりていますが、高齢者や初心者は、ダウンロードしたり、これこれの環境でなくては使えないとかいったものをご自分で導入したいとは思いません。バージョンアップすら恐ろしいし、面倒です。フレームを使ったり、他の技術を使ったりすると情報が伝えられないとガイドラインなどで禁止しているサイトがこういった機能を導入しているのはまことに奇異に感じられます。
一般の方でも使いやすい普通のページこそがバリアフリーなホームページなのです。思い込みのバリアフリー対策は真のバリアフリーとは相容れないものだと認識して頂きたいものです。
健常者にとって、障害者がどのように感じているのか想像するのかは難しいことなのでしょう。障害者には余計なことでも、ホームページに対策を施しているという安心感を得られるからででしょうか……。
バリアフリーなホームページとは特殊な対策を施さないホームページを制作することです。